番外編01-03 - 3/3

番外編03 杢太郎ちゃんと、いっしょ。

* これは2024年3月のお話です *

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
たっぷりのお湯に浸かった杢太郎さんが、大きなため息のような声をあげる。
「やっぱりうちの風呂はいいなあ」
バスタブの縁に両腕をひっかけ、彼は蒸気の向こうで首をぐるぐる回していた。
入浴剤を入れた濁り湯の中で、彼は全身をゆったりと広げているだろう。

「ホテルのお風呂じゃ、足伸ばせないもんね」
彼がマンションを選ぶ時、広くて大きなこの浴槽は、決め手の一つだったという。
私が湯船に入ろうとすると、彼は右足を出してこちらも縁にひっかけて、私の場所を空けてくれたようだった。
右膝に残る手術の跡を無意識に撫で、私はそっと彼の両腿の間に座り込んだ。
私の目の前には、真っ白な湯面にほんのり赤黒い先端がすこやかな光を放って、ぷくっと浮いている。
「おかえり、杢太郎ちゃん」
指で包んでその先端に、ちゅっとキスをした。

今日の昼過ぎ、杢太郎さんが、浅黒く日に焼けた笑顔で帰ってきた。

昨日から楽しみで眠れなかった私は、落ち着いて出迎えるよう自分に言い聞かせていた。
だけど一体どれだけのハートマークを、私はダダ漏らしていたんだろう・・
苦笑に近い笑いを浮かべ、彼は嬉しさに照れる私の頭をワッシャワッシャと撫でた。

キスをすると、先端がフルフルっ!と揺れる。
そして私の頭上から、カン高い声が聞こえた。

「タダイマシィチャン。サミシカッタカイ」

咄嗟に顔を上げる。
杢太郎さんは濡れた前髪を掻き上げながら、あはははは、と笑っていた。
「杢太郎ちゃんがしゃべった」
あまりの可愛さに私は掌で茎全体を包み込み、目を閉じて頬擦りをした。
「おい、しぃ、そっちかよ」
笑いながら、杢太郎さんが親指で自分の胸を指差す。
「杢太郎さんはこっちだろ、こっち」
「あは」
私はお湯の浮力に身を任せ、杢太郎さんのたくましい胸元へふんわりと抱きついた。
「杢太郎さん、お疲れ様。会いたかった」

首筋と胸元にくっきりとついた日焼けの境目を楽しんでいると、彼はボチボチと、沖縄でのお仕事の話をし始めた。

昨シーズンを限りに現役を引退した牛山さんが、今年から関カムジュニアアカデミーのコーチに就任することになった。
二軍は基本的に若手中心だけど、牛山さんくらいのベテランだとむしろ、キャンプなら一軍じゃなく二軍の方で、自分のペースでやってもらったほうがいい。
去年まで牛山さんは、二軍キャンプ組だった。
ただ杢太郎さんは、年上で実績もある牛山さんに何か指導できる事も無く、逆に恐縮していたのだった。
その牛山さんがコーチングのコツを聞きに、沖縄までわざわざ、来てくれていたんだそうだ。
もうキャンプ中に遊んでもらえなくなるんだな、と、彼は寂しそうだった。
同じく二軍調整だったキロちゃんは、今年から「コーチ兼捕手」の登録になる。
聞けば50歳まで現役を続けると、周囲の引退説を豪快に笑い飛ばしたそうだ。
「俺って太ったかな」と、しきりに自分の体型を気にするようになった。
ラジオで言われたことが地味に気になっているらしい。
若手と一緒になって自分も相当走り込みしたり、空いた時間はトレーニングしてたんだという。
現役の時より俺真面目かも、と彼は笑う。
きっと、充実した1ヶ月だったんだろうなと思う。
私もずっと笑い声をあげながら、その広い背中を流した。

春の柔らかな日差しが、寝室に流れ込む。
ベッドに乗せた大きなクッションに上半身を預け、彼はねそべって私を穏やかに見つめていた。
多少慣れたとはいえ、どんな美しい彫刻も敵わないその裸体は、何度見てもいい。
いつものように彼は口元に笑みを浮かべ、私を迎えるように左手を差し出す。
私はその、固く弾力のある肉体に吸い寄せられるように、体を重ねた。

ちゅっと軽く唇を奪ったら、胸板を撫でながら、首筋、喉仏から鎖骨へと口付けを這わせる。
舌で彼の筋肉の形を実感しながら、私は体を彼の下半身へ移動させていった。

たどりついた杢太郎ちゃんは、まだ若干リラックス中だった。
根本から先端へ、頬擦りとともに舌を細く出して、するーー・・っと滑らせてみる。
そして雁首のくびれを舌でなぞるみたいに、一周、二周・・と舐め回す。
茎全体を優しく撫で撫でしながら裏筋をざらっ・・と舐めたら、彼は少しだけ吐息を漏らした。
茎が徐々に力強さを増して、立ち上がってゆく。
太くなった雁首付近を、指で輪を作ってきゅううううっと握った。
不意に先端が、てらっ、と輝くように血の気を帯びる。
唇をクッションみたいに柔らかく使って、その美味しそうな先端を、プクンと口に含んだ。
唾液をいっぱいいっぱい含ませて、ツルツルの先端に舌を絡める。
彼の「ん」という声が艶っぽくて、思わず反射的に、先端の割れ目に舌先をねじ込んだ。
私の握った掌に、その茎がむくむくと脈打つ感触が、伝わってくる。
やがて舌先に、とろける彼が、まとわりついてきた。
舐め続けながら茎を扱いて、可愛い杢太郎ちゃんの、立派な成長を愛しんだ。
愛でながら、根元の袋にそっと手を伸ばす。
その重みをじっくり確かめながら、皺の一つ一つを伸ばすよう、丹念に丹念に摩る。

彼は余裕ありげな態度で、私の頭をゆっくりと撫でた。
「しぃ、もういい」
もっと愛したいのにと思いながら顔を上げた私に、彼は
「いつ出るか分からん」
と顔を上気させて、笑った。

ちょっと待ってろと言い残して彼は、装備を整え戻ってきた。
そして私をちょっと力任せに押し倒し、ベッドに押さえつけた。
「俺は負けず嫌いでね」
自分の指を唾液でたっぷりと濡らし、その指で私の唇をぽてぽて、ぷにぷに、と弄ぶ。
「・・・・可愛い唇だな」
軽くこじ開けられ、敏感になった唇から背筋に甘い電流が走る。
そして私の口元からは、二人のカクテルがあふれて落ちた。

見下ろす眼差しに射抜かれて心を蕩かせていると、不意に小さくキスを受ける。
最初は本当に軽く、次第に段々と音を立てるように。
やがてそれは激しい雨のリズムで私に降り注ぐ。
同時に、彼の先端はちょんちょんと、ずっと私を攻めているのだった。
唇のたてる音が、唾液を含んで粘り気を帯びてくる。
その度私は少しずつ押し広げられ、それでもつっつくだけの彼に、期待をこぼれ落としながらヒクヒクと震えてその瞬間を待っている。

つまり先に我慢できなくなったのは、私の方だった。
「杢太郎さん・・・もう、お願い」
「早く・・挿れてほしいっ・・」
懇願するように、彼の背中に腕を回してしがみつく。
彼はきっと、その合図を待っていたのだろう。
熱く重い口づけの圧と、一思いに貫かれる下からの衝撃が、同時に私を襲った。
体を跳ね上げる自由は許されない。きつくきつく、抱きしめられていた。

あんなに可愛かった杢太郎ちゃんは、その後私を、泣くまで苛め・・・
いえ、愛してくれた。

気づけば食事もせずに、ほんのり夜になってしまっていた。
「お腹すいたでしょ・・なんか適当に・・作るわよ」
「いいよしぃ・・のんびり、しようや」
暗い部屋でお互い何も着ないまま、ボンヤリしながらのほほんと会話していた。

「そういえばさあ、週末に藤次郎来るって。のらぼう菜持って」
「わー、それは嬉しい〜〜・・去年は料理法分かんなくて、失敗しちゃったからね・・」
「俺はマズかったなんて・・言ってないぞ」
「のらぼう菜の味がしなかったんでしょ・・味付け濃すぎたのよねえ」
杢太郎さんの弟さんの藤次郎さんは、地元で農協に勤めている。
地元の特産野菜を、時期が来ると色々持ってきてくれるのだ。
「しぃが喜ぶなら、あいつも嬉しいってさぁ。地元野菜のPRはあいつの仕事だから」
「えらいよねぇ、地元で就職して地域貢献って」
「田舎だけど、あいつ地元大好きだからなあ」

彼が、大きな窓を眺めながら言う。
「・・・・しぃは、この街が好きかい」
窓の外には、小さな街の市街地っぽい、夜景とも言えないような夜景が広がっている。
私はここでとりあえず何不自由なく育ち、今は街で一番のマンションに住ませてもらっている。
「そうね」
「・・・・生まれた、街だからね」
好きも嫌いも言わなかった。
「そうか、そうだよな」
彼は私の顔を見ない。明言を避けた私に、曖昧な返事。
彼が何か言いたげな。
そんな感じがした。

自分で買ってきた泡盛を少し飲んで、彼はぐっすりと眠っている。
軽やかな寝息を聞きながら、考えていた。

(・・・・・一軍?)
(異動?転籍?配置転換?)
(まさかの退団)
(それは無いか、さすがに・・)
(何か、言われてきたのかしら・・・)

彼は多分、このままずっと二軍のコーチで終わる人ではない。
私としては、二軍で若い子たちの面倒を見、一軍へ送り出す役は適任だと思っている。
だけど、周りが彼を放っておかないだろう。
野球界には現場以外、ユニを着る以外のお仕事だって山ほどある。
尾形くんみたいに、突然フロント入りを打診される事だってあるのだ。
ただ何にしても・・
いつか必ずこの部屋を引き払う日が来るんだろうな、とは思った。
私の全てが詰まった、関カムと、杢太郎さんに出会った、この大切な街と。

(大丈夫よ)
この寝顔を見ていると、ほっと安心する。

(どこへでもついていくよ)
杢太郎さんとなら、どこだっていい。

(・・・ずっと、いっしょよ)
彼の洗い晒した髪を撫で、もう一方で指を繋いだ。
彼の寝息に誘われ、私もいつしか、深い眠りに落ちていた。

 

〜 関東ゴールデンカムイ  すたー編 完 〜

 

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