EP.06 それって誤解
「そうでもないんじゃない?短い期間だったし」
なんか怖い。けれど悪いことは何もしていない。
私はどうやったら彼の誤解が解けるのか、嫉妬?をどう解消したらいいのか分からず、心の中では大混乱だった。
それでも平然を装っていると、杢太郎さんはイラつきを隠せない様子で
「親父さんも、アリコみたいなタイプの方が良かったんじゃないのか」
言いながら、しゅる、っと音を立てて自分のネクタイを抜き取った。
そして片手でワイシャツのボタンを首元だけ外し、片手は私の頬を掴んだ。
私が質問に答える間もなく、彼は力任せに唇を押し当ててきた。
そのまま小上がりに押し倒される。
「やっ・・・・こんなところで」
「こんなところって何だよ」
「初めてヤったのだって、ここだったろ」
「イヤなのかよ。さっきまで奴といたところでヤるのが」
やっぱり誤解してるんだ。
荒々しく床に仰向けに押さえ付けられ、私はイヤイヤをするように首を横に振った。
彼に片手だけで私の両方の手首をまとめて頭の上で掴まれ、まるで拘束されているようだ。
竦む私を見下ろす彼の目に、一瞬切なさが滲んだ。余裕の無い彼の息づかいが胸に突き刺さる。
手首をきつく掴む力とは裏腹な、甘くやわらかい口付けが降りてきた。
口付けの熱さに私が吐息を熱くしていると、カチャカチャと、彼が性急に自分の物を解放している音が聞こえた。そして私のスカートをたくし上げ着衣がめちゃくちゃにになるのも構わずに、私をこじ開けるようにぐいぐいと刺し、突き入れてきた。
窮屈に分け入られ、「・・いっ」と声が出る。
痛みに思わずのけぞる私の体を、彼は自分に縛り付けるようにきつく抱きしめた。
「杢太郎さん・・・い、痛いよぉ・・」
彼は返事をせず私を包み込むように抱き直し、しばらく動かず自分自身を馴染ませるかように、黙って密着していた。
私の中で彼が、一段と膨らんでいくのを感じる。
私の入口が、彼を求めて少しずつぴくん、ぴくんと波を打ち始めた。
脳内に甘ったるい感覚が流れ始めると、次第に余計な力が抜けていく。
彼は徐に私から体を引き抜いて、慣れた手つきで私をコロっとうつ伏せにした。
いつの間にか座敷に積んであった座布団が雪崩れて、無造作だけど敷かれてる。
彼は背後から、私の耳元で囁いた。
「顔、横向けて床につけて」
「腕は楽にしてていい」
囁きと同時に私の腰はすっと持ち上げられ、すっかり熱く馴染んだ中がまた、彼でいっぱいに満たされた。
ゆっくり抜き挿しされるとその度、ビリビリとしびれるえも言われぬ快感が押し寄せる。
思いがけなく大声が出てしまうが、自分では止めようもない。
「足伸ばせるかい。ゆっくりでいいから」
低く小さな声で囁かれ、それだけで背中がゾクっと来るほど敏感になっている。
私がこんなになっているのに・・どうしてアナタはそんな平静でいられるの。
快感を必死に堪えて目を固く閉じると、涙がじわっと滲んだ。
言われるままに足を伸ばすと、完全にうつ伏せになった私に彼が覆いかぶさってきた。
挿入角度が変わって、初めての場所を激しく摩擦され衝撃が走る。
体の奥からはとめどなく、擦られ突き上げられ疼きが溢れて止まらない。
私は今まで出した事の無いようなはしたない声を、部屋中に響かせていた。
思わずぐっと足を閉じると、私の首元にかかる息が熱さを増した。
顔は見えないけれど、彼の体もまた波打って、私を求めているのを感じる。
首筋や耳に、何度も唇と舌が這い回る感触を覚えた。
長いストロークで私の中に幾度か滑り込んできた後、彼は吐息か声か区別がつかないようなかすれ声で、私の耳に「いく」と吐きかけた。
私の意識も真っ白に吹っ飛び、彼の重みをただただ、全身で感じていた。
やがて彼が上半身を起こし「やべっ」と小さく呟くのが聞こえた。
「見られたな」とか言ってる視線の先には、どうも・・・斎壇・・
「・・・だから」
「こんなところで、って言ったでしょお・・・」
「あ」
本当にやっと今、それに気がついたのか。
「せっかく、考えないようにしてたのに・・・」
「思っても、そういう事は、言わないの」
「もう、ばかーーーーー」
私はうつ伏せになったまま顔を隠すように覆い、足をバタバタさせた。
「しぃー」
「オレはさー、ただね、マンション帰ったらしぃがいないから」
「なんか手伝える事でもあるかなと思って、ただそれだけ。それで何となく来ただけだったの」
「それがさー」
「いやーーーなんか燃えちゃったなー」
ばか、とは言ったが、あっけらかんとした彼の声に、私は心底、安堵していた。
一頻り思いを発散したら、スッキリした・・のかな。
私は彼の下から這い出して、彼の前に座った。そして彼の手を取って拗ねたように
「おかえり。会いたかったよ」と今更だけど、呟いた。
「オレもだよ」と小さなキスの後、本当に今更私たちは、指先だけで少しイチャイチャした。
「しかし今来て正解だったな。しぃの昔こと聞けるとは思わなかった」
そう言って彼は私の前髪を掻き撫でて額を露出させ、私の目を覗き込んだ。
「だけどまだ知らねえ事、いっぱいありそうだな。悔しいね」
悔しい、と言いながら彼はどこか楽しそうだった。
